N-Back / RESEARCH NOTE
N-Back課題とは?数字の意味ではなく位置を更新する仕組み
N-Back課題のルール、ワーキングメモリとの関係、正答率と見逃しの読み方を研究論文に基づいて解説します。
N-Back課題の基本ルール
N-Back課題では、順番に表示される刺激を覚えながら、現在の刺激がN個前と同じかを判断します。training側のN-Backでは、3×3のマスに表示される位置を覚え、N個前と同じ位置なら「同じ位置」を押します。
1-Backなら直前、2-Backなら2つ前、3-Backなら3つ前の位置と比べます。Nの数字が大きくなるほど、保持しながら更新する情報の距離が広がるため、判断の負荷も変わります。
研究では何を調べる課題なのか
Kirchnerの1958年の研究は、急速に変化する視覚情報を短時間保持する課題を用いて、年齢差を検討しました。その後、N-Backは作業記憶や注意の研究で使われる代表的なパラダイムになりました。
Owenらの神経画像メタ分析では、N-Backの複数研究を対象に、前頭部・帯状皮質・頭頂部などを含む活動パターンが検討されています。これは課題中の認知処理を研究した知見であり、ゲームをプレイすれば脳の機能が改善するという意味ではありません。
正答率だけでなく見逃しと誤反応を見る
N-Backでは、同じ位置を押せた正解ヒットだけでなく、同じでないのに押した誤反応、同じなのに押さなかった見逃しも重要です。training側では、正解ヒット率、誤反応、見逃し、判断の正確率、平均反応時間を分けて記録します。
Nが違う結果を単純に比較するときは注意が必要です。刺激の速度、試行数、同じ位置が出る割合、表示方法、入力機器が変わると結果も変わるため、まずは同じ設定内で自分の傾向を見てください。
N-Back訓練で改善しやすい課題
Soveriら(2017)のメタ分析は、健康な成人を対象にした33件のランダム化比較試験から203個の効果量を統合しました。訓練していないN-Backへの転移は中程度でしたが、N-Backとは別のワーキングメモリ課題、流動性知能、認知制御への効果は、とても小さい範囲でした。年齢、訓練量、単一課題か二重課題か、言語刺激か視空間刺激かによる明確な調整効果も確認されませんでした。
この結果は「練習した形式に近い課題ほど伸びやすい」という見方と整合します。トレーニング後に同じ種類の成績が上がっても、未訓練の記憶課題や日常の判断力まで同じ大きさで伸びたとは言えません。研究でいう転移は、どの課題を対照群と比較したかによって結論が変わるため、単純なビフォー・アフターだけで効果を決めないことが大切です。
スコアの伸びと戦略の影響
N-Backでは、刺激をすべて同じように覚えるのではなく、直前の位置を更新する、古い位置を順番に捨てる、といった課題固有の戦略を覚えることで成績が上がることがあります。戦略を教える群、教えない群、訓練を受けない対照群を比較したランダム化比較試験では、戦略の使用が訓練後のN-Back成績と関連し、未訓練N-Backへの近転移も検討されました。
したがって、このサイトで自己記録を続ける場合は、成績向上を「脳の容量が増えた」と断定せず、課題への慣れ、手順の理解、戦略の改善が含まれる可能性を残してください。別の日常課題や学習成績を同時に測っていない限り、遠転移はこのゲームの結果から判断できません。
N-Backトレーニングの限界
N-Backの成績が上がることと、日常生活の広い能力が上がることは同じではありません。Kaneらは、N-Backが作業記憶だけでなく注意制御や判断など複数の処理を含む可能性を検討し、課題の構成概念を慎重に扱う必要性を示しました。
このページとゲームは、研究で使われる課題の考え方を紹介し、プレイ結果を記録するものです。認知症の予防、IQ向上、病気の改善などを保証するものではありません。
参考文献
- Kirchner (1958), Age differences in short-term retention of rapidly changing information
- Owen et al. (2005), N-back working memory paradigm: a meta-analysis
- Kane et al. (2007), Working memory, attention control, and the N-back task
- Soveri et al. (2017), Working memory training revisited: A multi-level meta-analysis of N-back training studies
- Soveri et al. (2017), Pattern of near transfer effects following working memory training with a dual N-back task
- Salminen et al. (2018), The early effects of external and internal strategies on working memory updating training